「藍は愛」というのは、ちょっときざかもしれませんが、かれこれ30年近く藍の古布とつきあってくると、古布そのものへの愛着も生まれるし、それから古布にまつわる物語もいろいろと聞き重なってきて、ますます藍がいとおしくなってくるのです。
藍との出会いは東京・赤坂のサントリー美術館で開かれてた「日本の藍染展」でした。会場正面奥に熨斗(のし)模様が見事に染めぬかれた布が目をひき、近づくと、産は「出雲」、用途は「大夜着」、技法は「筒描き」とキャプションにありました。それから数年後、僕は出雲に勤務することになったのです。
明治の中頃から昭和のはじめにかけて、出雲では嫁ぐ娘に「嫁ごしらえ」といって、たんす掛けや夜具、祝い風呂敷など大量の藍布を持たせて嫁がせました。そして、嫁いだ娘が懐妊したという知らせが親元に届くと、今度は「孫ごしらえ」といって、産着、おむつ、子おい帯といった藍で染められた祝いの品が届けられました。そんな話を幾度も耳にするうちに、「藍は愛」と思えるようになっていったのでした。飛鳥藍染織館はそうした藍の古布を展示しています。
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